杉浦能楽堂・鳴滝能

午後は街の喧騒からも、紅葉の彩りからも離れ、地元鳴滝の杉浦能楽堂で「秋の鳴滝能」の会にお邪魔してきました。

観世流能楽師・杉浦豊彦さんにより、初心者にも判りやすい能楽への招待席が、年に数度「鳴滝倶楽部」として開かれていますが、今回は解説などに続いて、実際に『葵上』*1が演じられるとあって、大きな期待感をもって訪れました。





今回は『葵上』の解説と共に、囃子のワークショップがあって、笛・小鼓・大鼓・太鼓の演者さんが、それぞれの楽器とその演奏法について、ユーモアたっぷりに解説され、更に実際の演奏をされるというもの。一本の竹管に見える笛が、実は竹刀のようにバラバラにしてから、裏表を逆に組み上げたものだとか、大鼓・小鼓の革の張り方が全く違って、大鼓のほうが乾いた革を一杯に張ったため高音で、小鼓は湿度を持った革を緩く張って、調緒しらべおで調音できるようになっているとか...。不勉強な私には全く初めて聞く話ばかりで、本当に勉強になりました。




その後の『葵上』については撮影出来ません*2でしたが、ちょっと変わったところで感動しました。というのも、上の写真でお判りと思いますが、今回私は舞台側方奥の『橋懸かり』と呼ばれる通路の、舞台に入るところにある『シテ柱』と言う柱の側で「真横からかぶりつき」でした。普段能舞台の照明はほとんどが「順光」で、衣装などがフラットに見えてしまうのですが、ここから観るといわゆる「レンブラントライト」のように、3/4逆光で非常に立体感・照りに満ちた姿で見えるのです。しかもシテの面の内側から、輝くように汗の滴る姿まで、観ることが出来ました。決して室温が高いわけではないですが、やはりかなりの運動量になるのでしょうね...でも、こういう事は言わぬが花なんでしょうか。

 

*1:葵上あおいのうえ源氏物語を題材とした能楽。シテ(=杉浦豊彦さん)の六条御息所ろくじょうみやすんどころの生霊と、ツレの巫女、ワキの横川小聖行者が登場しますが、生霊に祟られて伏せっている葵上は、舞台前方に着物が置いてあるのみという設定。これぞ能!という簡略化された形式美でしょう。

*2:撮影不可が当然で、解説やワークショップが撮影できるのが、かなり特別なことでしょう。