蹴上インクライン

雨と桜の情景を求めて出掛けましたが、結構な人出のために、あまり叙情観もなく、人無き絵を撮って帰ってしまいました。
        
インクラインというと、琵琶湖疏水の水運ため...と、簡単に語られがちです。でも灌漑水利、水運交通だけが疏水の目的ではなく、ここまで緩やかに流してきた琵琶湖の水を、一気に流し落として発電しようというのも、疏水の大きな目的の一つ。だからこその高低差*1で、インクラインも必要なのです。お陰で路面電車を走らせることも出来、本当に総合的に優れた一大公共事業だったわけで、今でも落差約34mを用いて、定格2100kW(最大4500kW)を発電しています。インクラインとは対照的に、観光客の興味をひかない蹴上発電所ですが、偉大なる先人達の遺構を、桜と共に収めました。
 
 
 

インクラインの下を通る小さな隧道。ここには『ねじりまんぽ』(煉瓦斜拱渠)という構造が採られています。これはレンガを水平ではなく、斜めに積み上げ、結果ねじられたような形となる、明治期の土木工法。南面に掲げられた『雄観奇想』の額。前述の如き優れた事業構想と、残された桜の名所は、正に雄観奇想を具現化したものでしょう。
 
 
 
 
 
 

*1:もちろんこの高低差を残すことで、流れを緩やかにして、水運・流域の安全を確保する目的も。